~うちの切刃で切れないものはない!~
舞台は東京下町・墨田区。高さ634メートルにそびえ立つ
スカイツリーのふもとにその会社はある。
明治42年創業。かつてゴム裁断業から始まった小さな会社が、現在では切刃・スライサー・スリッター専門業としてさまざま食品製造を支えている。
そんな金子製作所が長年にわたって培った切刃の技術とは
いったいどんなものなのだろう。
筆者は金子正明専務に話を伺うことにした。
筆者
「はじめに、御社の切刃について詳しく教えてください。」
金子専務
「私たちのつくる切刃の良さは何といっても"切れ味"です。
私たちはたゆまぬ努力や向上心で、従来品よりも切れ味がよく長続きするものをつくる努力をしています。お客様の中には難しいご要望をご依頼される方もいらっしゃいます。それでも私たちはできる限りお客様のご要望に、他社にはない独自技術で添えるよう努力致します。」
なるほど。お客様のニーズに応えるために、日々独自技術を追求しているのか。
一つ目の質問から金子専務の熱い思いを垣間見ることができた。
ものづくりとは日々の努力の積み重ねが大事だということなのかもしれない・・・。
次は誰もが気になるこの質問をしてみよう。
筆者
「私たちのように切刃のことをよく知らない者からすると、切刃とは一体どういう場面で使われているものなのかあまり想像がつかないのですが私たちの身近なものにも、その技術は使われているのでしょうか。」
金子専務
「もちろんです。例えば、弊社でつくっている切刃のほとんどが、
うどんやそばなどの麺を切る切刃です。食品売り場に置いてある
うどんやそばの中には、私たちがつくった切刃で切ったものが沢山
あります。さらにカップ麺にもその技術は使われていて、誰もが知るあのカップうどんの麺にも切刃技術は使われ、それには特許技術も
もっています。また昔からあるラーメン風のあのお菓子にも・・。
そのほかにも、食品であればほとんど何でも切ることができます。」
筆者
「ほう、まさに金子製作所に切れないものはない!ということ
ですね。」
金子専務
「はい、切れないものはありません。うちはすでに製品化されたものを売る以外にお客さんの要望を伺ったうえでオーダーメイドの切刃をつくるので、切りたいものにぴったり合う切刃をつくることができるんですよ。
なかには過去の実績にないようなオーダーが入ることがあります。
だけど、「こんなものでも切れますか?」というような、自分たちにとって無茶なオーダーがくると逆に燃えてくるんです。だから今まで切れなかったものに出会ったことはありませんね(笑)」
なるほど、流石100年の実績がある会社は違う。
これまでの栄光にとらわれることなく、飽くなき挑戦を繰り返すことを楽しむ余裕さえあるのか。
金子製作所が永続企業たる所以は、その惜しみない努力の賜物であることは言うまでもない。
・・・しかしそうは言っても、なんでも切れるというのは
さすがに言い過ぎではなかろうか。
仮に食品に限定したとしても、柔らかいもの、ねっとりしたもの、
ものすごく硬いもの、いろんなものが存在するのだから。
たとえ切ることができたとしても、そのものの形状を保ったままで
ないと意味がない。手で切るのとは訳が違い、刃をあてる強さなども
調整する必要があるだろう。
すべての条件がそろってはじめて切れたといえるのだから、
中にはまだ技術的に難しい食品があるはずだ。
筆者は、金子製作所に挑戦状を叩きつけてみることにした!
筆者
「では、こちらが用意した「これは絶対切れないだろう・・」と思うものを、実際に切って見せていただくことはできますか。」
筆者は金子専務のとまどいを見逃さなかった。
まさか今になって大風呂敷を広げたことを後悔しているのだろうか。
そうだとしてももう遅いのだ。私たちが金子製作所の限界を世に知らしめる時が来たようだ。
こうして筆者と金子製作所との戦いが幕を開けたのだった・・・・。つづく。